2024年1月15日にフンガ・トンガ噴火から2年が経過しました。
その次の日には、噴火の影響で岩手県と奄美群島・トカラ列島に津波警報が発表されました。
しかしながら、岩手県における避難者は4%という低さでした。
今回の内容は「正常性バイアスなどによる楽観的思考」で以前取り上げたことがありますが、何度も見直してほしい重要なことです。
したがって、もう一度取り上げることにしました。
「自分の地域では災害は起きない」
「起きたとしても大したことないだろう」
「そもそも行動の仕方が分からない」
こういった考えだと災害時には命に関わります。危険です。
必ず最後まで読んだうえで、備えを見直してください。
災害への備えは出来る範囲のことからで構いません。
とにかく少しずつ進めていきましょう。
フンガ・トンガ噴火と津波
フンガ・トンガ噴火とは?
フンガ・トンガ噴火を引き起こした火山である「フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山」はどこにあるのでしょうか。
フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山は、日本から8,000km以上離れた、南太平洋トンガにある火山です。
この火山で1月15日13時ごろ(日本時間)、大規模な噴火が発生しました。
「大規模」という言葉をさらに詳しく表現すると、世界では数十年に1回、あるいは100年に1回の規模だそうです(ソース)。
潮位変動の発生(海外)
14時31分には、アメリカ領サモアで0.6mの潮位変動が観測され、太平洋津波警報センターは「火山活動によって津波が発生した」としてサモアに津波注意報を発表しました*1。
また、ハワイでは「津波被害の心配なし」としていましたが、18時29分にハワイで0.1mの潮位変動が観測されました。
そこで、「津波被害の心配なし」という情報を打ち消し、津波注意報を発表しました。
ここまでの話をまとめると、次のようになります。
潮位変動の観測(国内)
奄美・トカラに津波警報、太平洋沿岸広範囲に津波注意報
気象庁は「21時頃から日本周辺でも潮位変動がある可能性はあるが、津波被害の心配はない」としていました。
ところが、この潮位変動(津波)は予想よりも2時間ほど早い20時頃から観測されました。
そして、23時55分には奄美市小湊で1.2mの海面変動が観測されました。
1mを超える津波は津波警報の発表基準ですから*2、気象庁は「奄美群島・トカラ列島」に津波警報、太平洋沿岸の広範囲に津波注意報を発表しました。
ここで、下の資料をご覧ください。
ここに書かれている観測点のうち、日本が最も火山から遠くなっていますが、トンガ以外の観測点よりも日本の観測点のほうが潮位変動が大きくなっています。
つまり、この潮位変動は通常の津波とは異なるメカニズムで起こったといえるでしょう*3。
これについて、気象庁は津波警報・注意報発表時の報道発表で次のように述べていました。
フンガ・トンガ噴火における「津波」は学術としては適さない表現であるものの、防災上の観点から津波として警報・注意報を発表したということです。
正常性バイアスなどの脅威
「避難者4%」という数字
奄美・トカラおよび岩手県の沿岸に津波警報が発表された、ということまで説明しました。
津波警報が発表されたときに取るべき行動は「すぐに高いところへ逃げること」が原則ですよね。
しかしながら、岩手県沿岸では津波警報が発表されていたのにもかかわらず、避難者が4%という少なさでした(ソース)。
津波警報が発表されていて危険なのに、なぜ逃げなかったのでしょうか?
避難の妨げになった要因は?
避難しなかった理由について、避難者4%という情報のソース元からピックアップしてみます。
こういった考えに陥ってしまったことが、避難の妨げになったようです。
しかし、これらの主張(避難の妨げになった要因)は次のように反論できてしまいます。
【要因②】外も暗くて寒いから避難をためらった
- なんとなく外に出たくない状況と感じるのは自然なことです。
- しかし、それでも津波警報が発表されているのですから、避難すべき危険な状況であることには変わりありません。
認知的不協和
皆さんは「認知的不協和」をご存知ですか?
認知的不協和とは、相反する2つの認知の板挟みになってしまう状態のことをいいます。
この画像で「夜中で寒いから外に出たくないなぁ」となっているところについては、前述した【要因②】のことです。
同様に【要因①】や【要因③】においても同様のことがいえます。
「認知的不協和」という状態になってしまうと、これまで生きてきた中で得た偏見に囚われてしまい、物事を適切に判断しにくくなってしまいます。
このことを「認知バイアス」といいます。
また、認知的不協和による認知バイアスに陥ってしまう現象は、人間ならば誰しもが起こりうるものです。
そのため、避難しなかった人を批判するのは全く問題ありませんが、その前に「人の振り見て我が振り直せ」ということです。
ここからは、認知バイアスやそれに関連するバイアスについていくつか説明します*4。
①正常性バイアス
災害の心構えを知るときによく出てくる単語なので、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
私のブログでも触れたことがあります。
正常性バイアスとは、自分にとって都合の悪い情報を過小評価あるいは無視してしまうことです。
自分にとって都合の悪い情報に触れると、自分を正当化しようと理由をつけてしまうことがあります。
そのため、避難すべきであることは理解していても、何かしら自分を正当化するための言い訳が出てきてしまうと「どうせ大丈夫だろう」といった楽観的思考に陥ります。
大袈裟のように思えるかもしれませんが、実際に災害時などいつもと違う状態になると起こり得ますから、それを自覚しておきましょう。
②同調性バイアス
同調性バイアスとは、周囲の人の様子を伺い、周囲の人と同様の行動を取ってしまうことです。
災害などが起きていない平常時では、基本的に問題ありません。協調性のある素敵な人だと思います。
しかし、災害時になると話は変わります。
「避難すべきかどうか」という問いについては、気象庁が津波警報を出している時点で「避難すべき」と回答できますよね。
なぜ、災害時にも周囲の人に合わせる必要があるのでしょうか?
「避難すべき状況」というのは一刻を争う危険な状態に陥ることですから、自分の命は自分で守りましょう。
仮に避難せずにいて危機一髪な状況になったとしても、それは自分の責任です。
他の人のせいにしないでください。