にじりゅうの防災・減災ブログ

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【3.11から13年】あの日を契機に改善された“緊急地震速報”と“津波警報”

東日本大震災からまもなく13年となります。
この機会に「災害への備え」について見直すきっかけにしていきましょう

この記事では、「東日本大震災を契機に改善された“緊急地震速報”と“津波警報」をテーマに解説していきます。

最後まで読んで、自分に出来る備えを考えた上で行動に移しましょう。


【はじめに】東日本大震災とは?

まずは東日本大震災について軽く解説します。
今回の主題は「東日本大震災を契機に改善された“緊急地震速報”と“津波警報”」ですから、詳しい解説は割愛しています。

東北地方太平洋沖地震

2011年3月11日14時46分、三陸沖を震源とするM9.0の超巨大地震が発生しました。
これにより宮城県栗原市最大震度7を観測しました。
これを「東北地方太平洋沖地震」と言います。

【基礎知識】マグニチュードと震度
  • マグニチュード地震そのものの規模(エネルギー)を表す数値
    • M9.0は国内観測史上最大規模世界でも4番目に大きな規模
  • 震度はその場所における揺れの強さを表す階級
    • 震度7はその階級の中で最大。
    • したがって、7を超える震度は存在しない

津波の被害

東北地方太平洋沖地震により、主に北海道から千葉にかけての沿岸で大津波が押し寄せました。

各地の津波の高さ(参考
  • 沿岸での高さ
  • 遡上高津波が斜面を駆け上がった高さ)は国内観測史上最大となる40.5mに達したところも。
【基礎知識】津波浸水深と死亡率(引用・参考
  • 内閣府の分析によると、津波に巻き込まれた場合
    • 浸水深30cm以上で死亡者が発生
    • 浸水深1mで死亡率100%、木造建物半壊
    • 浸水深2mで木造建物全壊

東京電力福島第一原子力発電所事故

原発事故も深刻でした。ここでは簡潔に解説します。

原発事故のメカニズム

福島第一原発では、地震津波の影響で冷却装置が停止してしまい、核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が発生しました。
1号機・3号機・4号機では水素爆発が起きました。

2号機では水素爆発は起きなかったものの、ベントという作業に失敗してしまいました。
これにより格納容器圧力が急落してしまい、大きな損傷が生じたと考えられます。
2号機の格納容器からは大量の放射性物質が漏れ出したとされています

帰還困難区域

福島県双葉町大熊町浪江町を中心に、今でも立ち入りが厳しく制限されている地域があります。
これを「帰還困難区域」と言います。

もちろん、震災当初に比べるとこのエリアはかなり減少しています。
しかしながら、県内の2.4%ほどが今でも帰還困難区域です(参考)。

▼おととし私が現地に行って撮影したものです


まとめ


【メイン】東日本大震災から学ぶべき教訓

ここからは、戦後最悪の大災害となった東日本大震災から学ぶべき教訓です。
これがメインテーマです。

東日本大震災は恐ろしかった」で終わりにせず、そこから何か学んで、一人一人が備えを進めなければ意味がありません
ここからもしっかり読んで、学んでください

緊急地震速報の改善①】PLUM法

皆さんは「PLUM法」をご存知ですか?

PLUM法とは?
  • 巨大地震が発生した際でも、精度良く震度を予測できる手法。
  • 震源や規模の推定を行わず、揺れの強さから震度を予測。
    • 従来は揺れから震源と規模を推定してから、推定した震源と規模より揺れを予想する手法。

この説明だけだと分かりにくいので、図を用意しました。
従来の手法(IPF法)とありますが、これは厳密には従来の手法のまま改善させたものですので、ご注意ください。

P波検知後、IPF法では次のような流れになります。

  1. 震源を推定
  2. マグニチュードを算出
  3. 全域の震度を予測

一方、PLUM法では次のような流れになります。

  1. 揺れがどの程度の強さか検知(震源や規模は推定しない)
  2. 直接他の地点の震度を予測

つまり、震源に近い順にA地点とB地点がある場合、「A地点で強い揺れを感じたらB地点でも強い揺れを感じる可能性がある」といった具合に推測するというものです。

なぜPLUM法が生まれたの?

きっかけとなったのは東日本大震災です。
東北地方太平洋沖地震発生時、緊急地震速報は東北5県にしか発表されませんでした。
ところが、未発表の関東などでも最大で6強の強い揺れを観測しました。

緊急地震速報は震度4以上の地域に発表されるものなのに、これでは過小ですよね。

≪PLUM法による改善事例(引用元)≫

つまり、東北5県ではなく

  • 東北地方のすべての県
  • 関東地方のすべての都県
  • 北海道、山梨県静岡県、長野県、新潟県、石川県 など

に発表する必要があったのです。

これをきっかけに、現在の緊急地震速報ではIPF法も活用しつつPLUM法も利用しているのです。

緊急地震速報の改善②】長周期地震動に対応

まずは長周期地震動について解説しましょう。

長周期地震動とは?
  • 周期が2秒以上の大きくゆっくりとした揺れ。
  • ビルの高層階では、コピー機や棚が暴走することがある。

これに関しては、図や動画を見るほうが早いです。

東日本大震災でも起きた「長周期地震動

東日本大震災では、震源から遠く離れた東京や大阪でも長周期地震動が起きました。

つまり、震源からの距離やその地点の震度に関係なく、長周期地震動に備える必要があるのです。


緊急地震速報の発表条件が改善

これまで緊急地震速報

  • (発表条件)最大震度5弱以上の揺れが予想されるとき
  • (発表地域)震度4以上が予想される地域に発表

としていましたが、

東日本大震災を契機に

というものも新たに加わりました。

念のため長周期地震動階級について解説しましょう。
長周期地震動階級とは、長周期地震動のレベルを表したものです。
震度と似て非なるものです。

また、長周期地震動階級は4が最も大きいので、5以上は存在しません。ご注意ください。


津波警報の改善】過小評価を防ぐ

東日本大震災を契機に、津波警報も改善されました。

東日本大震災では大幅な過小評価

東日本大震災のとき、大津波警報津波警報を大幅に過小評価してしまいました。

具体的に、大津波警報が発令されたのは

この3県だけでした。
しかし、実際には予想を遥かに超える巨大な津波が押し寄せました

本来は北海道から千葉にかけて大津波が押し寄せたのにも関わらず、大津波警報が発表されたのは3県だけ。
これは大幅な過小評価ですね。

なぜこのような事態になってしまったのでしょうか。

一番の原因は「マグニチュードの飽和」

様々な原因はありますが、一番の原因は「マグニチュードの飽和」です。
マグニチュードの飽和とは何か、一緒に見ていきましょう。

マグニチュードには種類がある

実はマグニチュードには何種類か存在し、日本では

の2つが主に使われています。
違いを見ていきましょう。

気象庁マグニチュード(Mj) モーメントマグニチュード(Mw)
メリット 地震発生後3分ほどで発表できるため、速報性がある M8以上の巨大地震でも精度良く求められる
デメリット M8以上の巨大地震だと過小評価してしまう 発表までには地震発生後15分以上かかる

気象庁マグニチュードのデメリットを見ると、「M8以上の巨大地震だと過小評価してしまう」とありますね。
これがマグニチュードの飽和です。

マグニチュードの飽和とは?

どうして、マグニチュードの飽和により過小評価してしまうのでしょう。

マグニチュードは電球の光の強さに例えられることがあります。
ここではM7、M8、M9の電球があると考えて比較してみましょう。

【ⅰ:M7とM8を比較する】

M8はM7の光の強さの32倍です。
簡単に見分けがつきますよね。

【ⅱ:M8とM9を比較する】

M9はM8の光の強さの32倍です。
ところが、これは見分けがつきにくいですよね。

地震における「マグニチュードの飽和」もこれと同様のものと考えて問題ありません。

東日本大震災マグニチュードの飽和

東日本大震災マグニチュード9.0と説明しましたが、これは厳密にはモーメントマグニチュード(Mw)です。
つまり、速報値はMw9.0ではないということです。

東日本大震災マグニチュードの速報値は
Mj7.9
です。

マグニチュードは1上がると地震の規模は約32倍になると考えると、Mj7.9とMw9.0では全然違いますよね。

津波警報大津波警報はこのマグニチュードの値を基に発表するために、前述したような大幅な過小評価を招いてしまったのです。


改善された「津波警報

東日本大震災のような過小評価を防ぐために、津波警報は改善されました。

M8を超える巨大地震であると判断された場合には、速報値のマグニチュード(Mj)を当てにせず、その海域における最大級の津波を想定して津波警報大津波警報を発表するようになりました。

また、そのとき予想高さを◯mのように発表せず

と言葉で発表するようになりました。

つまり、「巨大な津波が来ます」などと報道されれば、東日本大震災クラスの津波が予想されると考えるべきです。

地震発生から15分以上経過してモーメントマグニチュード(Mw)が求められたら、それを基に津波警報大津波警報を更新します。
したがって、予想高さも数字での発表に切り替わります。

他にも、津波警報大津波警報の予想高さの発表区分にも変更が加えられて、以下の画像のようになりました。

このように、東日本大震災を契機に緊急地震速報津波警報は改善されました。

まとめ




私達が留意すべきこと

私達はどういった点に留意すれば良いのでしょうか。
それは至って単純。

「私は大丈夫」「自分の地域では大きな災害は起きない」などと考えずに、情報が出た段階で適切な行動を起こすこと。

これだけです。

緊急地震速報を見聞きしたら、
「落ちてこない」「倒れてこない」「移動してこない」場所で、身の安全を確保する。

津波警報大津波警報を見聞きしたら、
すぐに高いところへ逃げる。

など、当たり前のことが当たり前にできることが重要です。

緊急地震速報津波警報を見聞きしたときの行動、必ず確認しておいてください。

災害が起こる前に「危険だよ!行動を起こして!」と呼びかけてくれているのですから、私達はそれを利用しましょう。

緊急地震速報見聞きした段階で、揺れが来るのを待つことなく行動してください。

津波警報大津波警報見聞きした段階で、高いところへ逃げてください。

こういった緊急情報が発表されている時点で、行動するか判断する時間は1秒たりともないからです。

緊急地震速報を見聞きしたら


津波情報と取るべき行動


まとめ

確認クイズ

ブログを最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回説明した内容が頭に入っているかを確認するために、確認クイズに取り組みましょう。
間違えたところがあれば、記事をもう一度読み直してみましょう。