今日で熊本地震から7年となります。
まず、この地震によって犠牲となった方のご冥福をお祈り申し上げます。
この記事では、熊本地震と内陸型地震について解説していきます。
内陸型地震は全国どこでも起こり得ます。最後まで読んで、ぜひ行動に移してください。
※下の画像はアイキャッチ画像(サムネイルのようなもの)です。震度分布は気象庁サイトを参考にしていますが正確ではありません。
▼目次
熊本地震とは?
前震
2016年4月14日21時26分頃、熊本県熊本地方を震源とするMj6.5*1の地震が発生しました(以後この地震を前震とします)。
熊本県益城町では最大震度7を観測しました*2。
義務教育の範囲なのでご存知だとは思いますが震度の中で最も大きいのは7です。7を超える震度はありません(詳しくはこちら)。
震度7とは次のような揺れです。
参考:気象庁 | 震度について
この前震の28時間後の4月16日1時25分、これよりもさらに大きな「本震」が襲います。
本震
熊本県熊本地方*3を震源とするMj7.3*4、最大震度7の地震がまた発生しました*5。
前震ではMj6.5でしたが本震ではMj7.3となり、阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震と同規模となりました。
震度7を観測したのは西原村と益城町で、計測震度はそれぞれ6.6、6.7となりました。
計測震度とは?
計測震度について分かりやすく説明すると、本来は“階級”として表される震度を“数値”として表したものです。
具体的には次のようになります。
震度階級 | 計測震度 | 震度階級 | 計測震度 | |
震度0 | 0.5未満 | 震度5弱 | 4.5以上5.0未満 | |
震度1 | 0.5以上1.5未満 | 震度5強 | 5.0以上5.5未満 | |
震度2 | 1.5以上2.5未満 | 震度6弱 | 5.5以上6.0未満 | |
震度3 | 2.5以上3.5未満 | 震度6強 | 6.0以上6.5未満 | |
震度4 | 3.5以上4.5未満 | 震度7 | 6.5以上 |
このように数値化した震度を用いることで、同じ震度だとしても、その場所における揺れはどちらのほうが強いか比較することができます。
例えば、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)と2018年の北海道胆振東部地震を比較すると次のようになります。
震度階級 | 計測震度 | 観測点 | |
東北地方太平洋沖地震 | 7 | 6.6 | 宮城県栗原市 |
北海道胆振東部地震 | 7 | 6.5 | 北海道厚真町 |
どちらも震度7で非常に大きな揺れです。
しかし東北地方太平洋沖地震の計測震度が北海道胆振東部地震より1大きいので、揺れは東北地方太平洋沖地震における宮城県栗原市の方が強いということになります。
話を戻します。
実は、熊本地震(本震)で見られた熊本県益城町の計測震度6.7は国内観測史上最大なのです。
それでは、日本で起きた震度7の地震のそれぞれの計測震度を比較してみましょう。
発生日 | 名称 | Mj | Mw | 計測震度 | 観測点 |
1995.1.17 | 兵庫県南部地震 | 7.3 | (6.9) | 6.49〜6.6 | 神戸市中央区*6 |
2004.10.23 | 新潟県中越地震 | (6.8) | 6.6 | 6.5 | 川口町川口*7 |
2011.3.11 | 東北地方太平洋沖地震 | (8.8) | 9.0 | 6.6 | 栗原市築館 |
2016.4.14 | 熊本地震(前震) | 6.5 | (6.2) | 6.6 | 益城町宮園 |
2016.4.16 | 熊本地震(本震) | (7.3) | 7.0 | 6.7 | 益城町宮園*8 |
2018.9.16 | 北海道胆振東部地震 | 6.7 | 6.6 | 6.5 | 厚真町鹿沼 |
このように熊本地震(本震)の計測震度6.7が最も高くなっています。
熊本地震の被害
熊本地震では次のような被害が出ました。
- 人的被害
- 死者 273名
- 負傷者 2,809名
- 建物被害 (計約21万棟)
- 全壊家屋 約8,000棟
- 半壊家屋 約34,000棟
- 一部損壊家屋 約153,000棟 など
- 被害額
- その他
震災関連死
避難生活によってストレスや持病が悪化することによって亡くなることを「震災関連死」といいます。熊本地震のときもこれが相次ぎました(218人)。
- エコノミークラス症候群(分からない人は絶対調べて)などにより車中泊後に死亡したケース(33人以上)
- 病院や高齢者施設の被災による転院・移動中に死亡(27人以上)
その他にも、
- 熊本城の復旧まで30年以上かかる
- まちづくりや住まいの再建
といった課題があります。
内陸型地震とは?
ここからは「内陸型地震」について解説していきます。
義務教育の範囲なので知っている方も多いと思いますが、念のため解説します。
地震発生のメカニズム
そもそも地震はどのようにして起こるか理解していますか?
まず、地球は「プレート」と呼ばれる板で覆われています。
プレートには「大陸プレート」と「海洋プレート」の2種類があり、少しずつ動いています。
ここから2種類の地震のメカニズムに分けることができます。
海溝型地震と内陸型地震です*9。
ここからはそれぞれどのようにして地震が起こるか解説します。
海溝型地震のメカニズム
画像引用源:地震のメカニズム | 東京都防災ホームページ
- 海洋プレートが大陸プレートの下へ沈み込む
- 大陸プレート先端が引きずり込まれ「ひずみ」を蓄積
- ひずみが限界となり耐えられなくなる
- 大陸プレート先端が跳ね上がり地震発生
このとき海溝型地震発生と同時に、海底から海面までの水が塊となって四方八方へ押し寄せることで、津波が発生することがあります。
過去に見られた海溝型地震は、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)や1923年の大正関東地震(関東大震災)などです。
また、今後起こりうる南海トラフや千島海溝沿いの巨大地震*10も海溝型地震です。
内陸型地震のメカニズム
海洋プレートの動きは海溝型地震に限らず、内陸型地震の発生の原因となります。
- 海洋プレートの動きで大陸プレートが圧迫される
- 内陸部の岩盤に歪みを生じさせ、「ひずみ」が蓄積
- 内陸部の地中にあるプレート内部の弱い部分で破壊され、内陸型地震が発生
過去に見られた内陸型地震として代表的なのは、先に説明した2016年の熊本地震や、1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)、2018年の北海道胆振東部地震などがあります。
また、今後30年以内に茨城南部を含む南関東直下でM7以上の内陸型地震が起こりうるとされており、これを「首都直下地震」などといいます。
しかし、内陸型地震は予測が難しいので、全国どこでも起こる可能性は否定できません。
内陸型地震の予測が難しいのはなぜ?
なぜ内陸型地震は予測が難しいのでしょうか?
理由は主に2つです。
1つずつ見ていきましょう。
未知の活断層が多い
実はこの活断層、現在2万ほど見つかっているのですが、まだ見つかっていない活断層がたくさんあるのです。
実際に次のような地震は、これまで確認されていなかった活断層で発生したのです。
阪神淡路大震災を契機に、国は活断層について本格的に調査を乗り出しました。
この2つだけでした。
活断層マップは参考程度に留めてください。
自分の住む場所の近くに活断層がないからといって安心しないでください。
出来ることから対策を進めてください。
地震の発生周期が長い
まず、地震は一定の間隔で繰り返し発生します。
海溝型地震では数十年から数百年の周期となっています。
それに対し、内陸型地震は数千年から数万年の周期となっています。
海溝型地震は短期間で地震を繰り返すので、「南海トラフ!」「千島海溝!」とある程度は予測できるのです。
一方、内陸型地震は発生周期が長すぎて発生時期に大きな幅が出てくることがあるのです。
平均活動間隔が長いためです。
例えば平均1000年周期なら、次の地震は700年後かもしれないし、1200年後かもしれないのです。
発生確率3%でも発生可能性が高い!?
主要活断層の長期評価を地震本部のサイトにて見ることが出来るのですが、これを見てみると…
引用源:地震本部 | 主な評価結果
※解像度が悪くて見にくい方は引用源のリンクから画像をご覧ください。
凡例の欄がこのように書かれています。
これを見ると「3%なのにSランク(高い)なの?」と思うかもしれません。
それだけ予測が難しいのです。
あなたの街が震度6弱以上の揺れに見舞われる可能性は?
ソースは地震本部の全国地震動予測地図2020年版です。
この図は、「その場所で地震が発生する確率」ではなく「その場所で震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」を表しているということに注意してください。
上の図を見ると、確率ゼロ(白のメッシュ)の地域は1箇所たりともないことが分かります。
つまり、日本列島どこにおいても「地震の揺れの被害に遭わない場所は1箇所たりともない」ということになります。
最後に
あなたの住む地域で「ここで大地震が起こることは絶対ない」といった話を聞いたことがあるかもしれません。
が、あれはただの迷信です。
同じことですが、日本列島どこでも地震の揺れの被害に遭わない場所は1箇所たりともありません。
自分の地域でも地震は来るものだと割り切って、出来ることから対策を進めましょう。
例えば……
- 家具の位置の見直し(お金に余裕があれば家具の固定と耐震化まで行おう)
- 緊急地震速報を見聞きした段階で行動できるようにする*11
- 非常用持ち出し袋と非常用備蓄品を揃える(水だけでなくトイレを忘れないように)
- ハザードマップを見ながら、家の近くの避難場所や避難所の周辺まで実際に行ってみる(その時に危険そうな場所があればマークしておこう)
- 大切な人との安否確認の方法を考える*12。災害用伝言ダイヤルは相手の人も知っていないと使えないので注意
この他にも自分で考えたり調べたりして、出来ることから地震への備えを進めましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
次回は5月ごろ「正常性バイアスの脅威」についての記事を投稿します。
*1:Mj6.5は気象庁マグニチュード。モーメントマグニチュード(Mw)は6.2である。
*2:この地震は震度6強の観測点がなく、益城町の震度7は局地的なものです。これは観測点と震源断層の位置関係や地震波の出方や地盤が関係しているようです。
*3:震源の位置は前震と本震どちらも「熊本県熊本地方」となっているが、同じ熊本県熊本地方でも場所は異なるので注意されたい。
*4:Mw7.0
*5:前震とは打って変わって震度6強の観測点は10ヶ所もありました。
*8:前述の通り西原村でも震度7を観測しており、西原村小森の計測震度は6.6となっています。
*9:海溝型地震は「プレート境界型地震」、内陸型地震は「直下型地震」という言い方もします。
*11:ただし内陸型地震だと初期微動継続時間の関係上厳しいかもしれません。きちんと地震発生時の行動を理解していれば、海溝型地震なら正しく行動できるかもしれません。